「備龍会レポート」カテゴリーアーカイブ

備龍会からの行事・活動報告。

「手業 -職人に支えられた仏具の世界ー」(後編)

2月4日に行われた浄青僧本山総参拝のレポート後編です!
前編

京都の仏具職人さん方に仏具の制作についてお話を伺っていきました。

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1人ずつのインタビュー、5人目は彩色師(さいしきし)の八木則行さんです。(写真上段 左から2番目)

彩色師とは、仏像や仏具(須弥壇、前卓)など彫刻されたものに彩色を施される職人さんです。襖絵や天井絵なども描かれています。

―彩色は特別な絵の具を使われるのでしょうか?

「古代より伝わる顔料(岩絵の具)を使用しています。経年劣化による退色がほとんどありません。
大変なのは石を砕いて色を作るので、全く同じ色は二度と作れないことです。最初に作った絵の具だけで書かないと色が変わってしまいますから。
岩絵の具は大変高価なものです。これだけあれば足りるだろうと、少し余分に作っていないといけません。少々勿体ないですが、足りなくなったら大変ですから(笑)」

色の継ぎ足しはNGなんですね。「二度と同じ色は出せない」色もすべて一期一会なのだとお聞かせいただきました。

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(色鮮やかな岩絵の具)

八木 顔
(彩色を施す八木さん)

―もともと子どもの頃から絵が好きだったりされたのですか?

「絵や美術品を見るのは好きでしたね。特に絵画はよく見ていました!
しかし日本画はあまり見ていなくて、西洋画ばかりみていましたので、それを知っている人からは、『天人さんには天使のように羽根を描くなよ!』と言われてました(笑)」
(※天使は背中から羽根が生えていますが、仏教に説かれる天人は羽根はなく、羽衣で空を舞うのです。)

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(八木さんが彩色された聖徳太子像)

こちらの聖徳太子様の着物の模様は盛り上がっているように見えますが、これは砥の粉を膠(にかわ)で溶いたものを使われているようです。大変細かくも立体感があって素晴らしいですね!

上の模様一つを見ても分かるように彩色師のお仕事は本当に繊細な作業です。想像を絶する集中力が必要となるでしょう。
またお話を伺ってみて、八木さんが施された彩色や絵それぞれに八木さんの優しいお人柄が表れているように感じました。

 


 

続いて6人目は蝋型鋳物師(ろうがたいものし)の山崎誠一さんです。

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(インタビューに答える山崎さん)

―蝋型鋳物とはどのようなものなのですか?

「蝋型鋳物とは、最初に蝋で型を作って、土で覆いかぶせて包み乾燥させたのち、炭と松割り木で焼き、蝋を流し出します。その隙間に溶かした金属を流し込んで作っていきます。

そして鋳物ができると、ヤスリや研石で仕上げます。
鋳物師は他にもたくさんいますが、蝋型でしている人は少なくなっています。」

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(型に金属を流し込まれているところです)

―山崎さんは蝋型鋳物を多くの人に広めたいという思いを持たれているとお聞きしましたが、鋳物を蝋型でする利点を教えてください。

「蝋型は古い技法なので、この先も残していきたいと思っています。やめていかれる人も多いので。
良さと言えば、蝋のそのままの味が出ることです。蝋のやわらかさがそのまま金属に現れてきます。蝋に指紋が付いたら、金属にそのまま指紋が出るほどです。」

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(蝋型鋳物 山崎さんの作品です)

―蝋型鋳物を製作中一番楽しいのはどこでしょうか?

「やはり蝋を練っている時が一番テンションが上がりますね。飴細工のように柔らかく、本当に手触りが良いんです!」

―蝋型鋳物のここを見てもらいたい!という所は?

「金属は冷たいイメージがありますが、金属そのものが持っている色や、金属それぞれの結晶を、そのまま出せるのが蝋型の特徴です。ですから、ぜひ近くでじっくりと見ていただけたらと思っています。」

山崎 顔
(仕上げをされる山崎さん)

鋳物の中でも「蝋型」という種類があることを今回初めて知りました。
金属そのものにも「目」があり、「結晶」がある。金属なのに生まれる「あたたかみ」があるのですね。初めて聞くことばかりではありましたが、蝋型の鋳物の魅力が伝わってきました。これからお仏具を見る時注目していきたいです。

物静かで穏やかな山崎さん、職人の皆さんからは折々につっこみを入れられる愛される方でありました。
同時に、職人の数が少なくなった蝋型技法を多くの方に、そして後の時代に「伝えていくぞ」という熱い思いを秘めておられるようでした。


いよいよ8番目、インタビューのとりを飾るのは、錺師(かざりし)の合場賴正さんです。
これまでも他の職人さんのインタビューの時に、つっこみを入れて笑いをとっておられました!

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―錺師とはどのような作業をされるのでしょうか?

「もともと錺師とは二つの分野に分かれていました。彫金師(ちょうきんし)という金属の形を整える作業をする役。もう一つは仏具などに錺(かざり)をつける作業をする役。今はこの両方をしています。」

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(この写真の柱などには合場さんが施された錺が付けられてあります。)

―そもそも錺とはどのようなものなのですか?

「お仏具などの金属に型を押して錺をつけていきます。たとえば魚々子という点を打つような錺は大変細かいものです。
どれくらい細かいかというと、1mmに2個点を入れろと言われるくらいです」

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くらくらするほどの細かさです!!

―錺(かざり)のトレンドというものはありますか?

「実は錺そのものは昔から全く変わりません。しかし、時代の移り変わりによって、錺を打つお仏具など本体の形が変わってきています。

また最近は、どの宗派のお寺にしても錺というものは商業ベースの簡略化されたものではなく、『御本山と同じ物を求めたい』というお声をよく聞きますね。時代は原点回帰ということでしょうか。」

 

合場 顔

(錺を打ち付けられていく合場さん)

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(合場さん製作 柄香炉)

―8名の新進気鋭の仏具職人の中で、合場さんがリーダーのように伺いました。どのようにこのメンバーをまとめられているのでしょうか?

「普段から切磋琢磨しています。まとめるということではないですが、言ってみれば飲んで仲良くなる(笑)
皆良いやつばっかりです。いつも話していると凄く楽しい、だから良いものができてくるんです」

今回の研修会を行う前に、一度打ち合わせをさせていただいたことがありました。なんと打ち合わせ場所の机にはたくさんビールが並んでいてびっくりしました(笑)

皆さんお酒も豪快に飲まれます。お酒の場の楽しいエピソードも多々聞かせて頂きました。
また打ち合わせの時や、当日リハーサルの時も終始笑いが溢れ、まさに「チーム」であると思いました。

職人さんはお仕事をされるとき個人個人の孤独な大変な作業でしょう。しかし、だからこそ職人さん同士にしか分からないご苦労を共有したり、情報を交換したりするお酒の場は、本当に大切な時間なのかもしれません。

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(インタビューは、備龍会の枝廣と佐藤が、○上がり決死隊のごとく怒涛の質問を行っていきました!)


次は、会場の参加者(青年僧侶)からの質問にお答えいただきます。どの質問もお答えも深く、味わい深いものでした。

―私たちがお寺に生まれてお寺の後を継ぐことが多いように、職人さんの家業を継がれた方が多いと思います。お父さんやお祖父さんを見て、どこから楽しさや遣り甲斐が分かったか、エピソードをお聞かせください。

須藤さん「仏師として遣り甲斐を感じるようになったのは、仏さまを彫ってお寺に入れさせてもらったら涙流されて喜ばれたことにあります。それを見たらもっと頑張らないといけないと自然と思います。その繰り返しで今があります。」

中井さん「今ちょうど、自分の子どもに自分の職を継がすかどうか考えているところです。私は自分でこの職(木彫師)に飛び込んだので。その人自身の特性がその職に向いていないと、できないような時代になってきたと思います。」

牧野さん「うちは自宅で、仕事と生活が一緒でした。父が扱う漆の匂いは正直言って臭い。子どもの頃は絶対父の仕事は継がないと思っていました。でも就く仕事就く仕事続かないんです。
なぜかというと、頭のどっかに『これがダメでもおやじの仕事につけば良い』という甘い考えがあったんです。塗師という職についてその考えはひっくり返りましたが。
最近息子が『お父さんの後を継げばいいんだろ』と言いだして(笑)」

―昔の作品を通して、何か感動したり、作られた方のメッセージを感じたりすることはありますか?

山崎さん「蝋型鋳物師をしていたおじいさんの作品を見ると、めちゃめちゃ綺麗ということではないが、何とも言えない味があります。今のものは綺麗でも、味はおじいさんの方があると感動しました」

八木さん「お寺の格天井は、本願寺の白書院もそうですが、萎れやすい花には水を含ませた紙で茎を巻くよう描かれたり、花以外に昆虫が描いてあったり、遊び心やいのちを大切にする心が描かれていることがありますね。」

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(八木さんが彩色された天井絵)

―西洋などの文化と比べて、日本の仏具や美術品独自の味、特徴は何でしょうか?

中井さん「日本は島国であり、四季があります。他の先進国にはない物が日本の仏教や伝統の中にあるのではないかと思います。
たとえば、日本自然豊かで自然の中に暮らしています。そして日本人は大変『木』を大切にしています。これほど木が育つ国もなかなかないでしょう。」

「自然」の中で生きていることを自覚している作品が多いのかな、「木材」を使った仏具にもその精神が根付いているのだな、とお話を伺って考えました。

「また、日本人の『まじめさ』から出てくる逆転の発想の面白さもあるのではないかと思っています。」ともおっしゃいました。

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(このお仏具は蝋型鋳物で、山崎さんが製作されたものです。
真面目さとユーモア。確かによくみるととても可愛い、おもしろい)

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(休憩時間も、直接仏具を見ながら職人さんからお話を伺いました!熱帯魚からデザインのインスピレーションを受けるという中井さんに「私も熱帯魚好きなんですよ!」と話が弾む場面も。)


ワークッショップ『箔押し体験』

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続いてはいよいよお待ちかねのワークショップの時間です。
箔押師の清水さんのご指導により、香盒(お香入れ)に金箔を押していく体験をしていきました。

手順としては、御香入れの蓋に漆を塗り、塗った場所に金箔が貼られていくということです。

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皆さん、和気あいあいと、しかし真剣な表情で作業をしてくださいました。漆を塗って金箔を押していきます。

しかし簡単な作業のように見えますが、あなどることなかれ、とっても繊細で難しい作業なのです!大変細かな作業で手先の器用さや、センスが問われるのです。
ちょっとした風、たとえば鼻息で金箔は、ずれてしまいますし、漆を隈なく塗らないと金箔がうまく押せないのです。)

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皆さん集中して、オリジナルの御香入れを作っておられました!

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さすが、会長!バッチリ仕上がりました!

充実したワークショップになりました。


『手業ー職人に支えられた仏具の世界ー』研修会を終えて

前後編に渡ってレポートしてきました仏具職人さんへのインタビュー、いかがだったでしょうか?

実際にお話を聞かせていただき、私自身日ごろ僧侶としてお仏具に接していたのですが、見方が変わったように思います。
月並みな表現ですが、妥協されることない匠の技に「これほどまでにご苦労があったのだな」と本当に頭が下がりました。

しかも皆さん最高峰の技術を持ちながら、現状に決して満足されておられず、まだまだこれから自らの技術を高めていこうとされています。
今まで受け継がれて来た伝統を守りつつ、今の時代に応じた作品を作り続けていくことは、本当に大変なことと思います。
次の世代に伝えていかねばという「責任感」と「熱い意思」を、御言葉の端々から感じずにはおられませんでした。

同じことが私たち僧侶にも言えるのでしょう。
この研修を受けて学んだことは、お仏具についてだけではなく、職人さんのその姿勢だったようにも思います。
私たちも、若手僧侶ならではの熱意とチャレンジ精神を持って、いつの時代も決して変わらない仏さまのみ教えを、様々な手段を持ってお伝えしていく努力をしていかねばと思いました。

私たち備龍会は今回本山総参拝の研修会を行うにあたり、進行についても試行錯誤して、昨今流行りのバラエティー番組に習ってひな壇形式にしました。
職人の皆さまはその意をくみ取ってくださり、立派なひな壇まで手作りで用意してくださいました。また研修の中では、「笑い」「ユーモア」をふんだんに踏まえてお答えくださいました。
無茶ぶりにも近いような質問をしたりもしましたが、どのインタビューにも真摯に、私たちに分かりやすいようにお答えいただきました。
参加者の皆様も、頷きながら聞いてくださって、あっという間の時間だったように思います。

長い記事となりましたが、皆さまもこれからお寺の仏具をご覧になるときに、匠の技とそこに籠められた思いを感じていただけたら、より身近に、より深くお寺やお仏具が味わえるかもしれません。

「手業(てわざ)ー職人に支えられた仏具の世界ー」(前編)

2016年2月4日(木)浄土真宗青年僧侶連絡協議会(以下、浄青僧と略します)の二年に一度の本山総参拝が、備龍会担当で行われました。

浄青僧とは、全国各地で活動する青年僧侶の会が、それぞれの活動を報告しあい、親睦を深める場です。

今回は当日の様子をレポートします。


 

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浄青僧に加盟する北海道・東京・高岡・山陰・備後・安芸・福岡の7団体の青年僧侶、約100名が集まり、御影堂で参拝式を行いました。


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備龍会会長の大淵英範がご挨拶いたしました。
「ご門主さまと同世代の僧侶として、ともにご法義伝播に勤めさせていただけますよう、これからも研鑽していきましょう!」

 


今回の研修テーマは「手業(てわざ)ー職人に支えられた仏具の世界ー」

京都の伝統工芸士(木地師・仏像彫刻師・木彫師・塗師・箔押師・彩色師・蝋型鋳物師・錺師)の職人方に青年僧侶がインタビューしていきました。終始笑いと拍手が沸き起こる、活気あふれる研修会となりました。

某トークバラエティ番組風のオープニングムービーに続いて、登場していただきました!

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今日は何のくくりですか?

「僕たちは京都の仏具職人です!」

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職人さん方が座られた立派なひな壇も、この日の為だけに作ってくださいました。 本当に多くの貴重なお話を伺いましたが、今回はその中の一部を紹介します。

トップバッターは、木地師(きじし)の泉嘉人さん。木地師とは仏さまの卓やお厨子などの木地を製作される職人さんです。西本願寺の前卓の修復にも関わられています。
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泉 顔(作業中の泉さん)

 

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実際に、御本山と同じ様式で作られている前卓を持ってきてくださいました。この足の部分に注目です!

仏具作製のご苦労をお伺いすると、具体的にこの太い足の丸味を彫るのにも大変な時間と手間がかかるそうです。

お仏壇やお仏具を製作するにあたって、大変なことは何ですか?

「製作期限を守ることです。お寺の御内陣は、職人がリレーで作り上げていくもので、一人一人が責任をもって次の方に渡していくチームプレーです。自分が遅れたら、次の塗師(ぬし)や箔押師(はくおしし)に影響が出てしまいます。ですから責任があります。でも、お仏具は代々お寺に残っていくものです。だからこそ、仕事は決してごまかすことができません。」

それでは、心がけていることがあれば教えてください。

「世の中はスピーディでかつ安いものを求められています。そんな今だからこそ、大切にしていることは『妥協しないこと』です。手間を惜しまない。簡単にすることに流されない。なぜならお寺さんの宝になるもので、皆さんが手を合わしていくものですから。」

これからの目標を教えて下さい。

「我々職人は最低10年続けてやっとスタートできます。私たちもまだまだです。しかし、次の時代にこの技術を繋ぐということが使命と思っています。これをなるべく絶やさないようにしたいです。」

泉さんからお話を伺い、私たち青年僧侶も同じように、精一杯おみのりを伝えていき、次の時代に繋ぐことが大切であると改めて考えさせられました。


 

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(左:須藤さん 右:中井さん)

2番手は、仏像彫刻師(ぶつぞうちょうこくし)の須藤隆さんです。仏像を彫られる職人さんです。
須藤さん

なんと今回の会場である安穏殿のご本尊阿弥陀様は須藤さんが彫られたものなのです!

仏さまを彫られて、手を合わせる礼拝の対象になることについて、どんな風に感じますか?

「仏像をご依頼くださる方の意向を大切にしています。そして特に仏さまの目線を大切にしていいます。」

実は仏像の眼の部分には水晶など宝石が入っているのです。その宝石お顔の表ではなく、裏から入れるのが大変難しいらしく、お顔の薄い表面部分が破られたら終わりという、もの凄く細かい作業です。そこまでのご苦労があったことは初めて知りました。

また、仏像彫刻士さんが彫られる仏様のお顔にはそれぞれに特徴や個性が表れていて、仏像を見るとどの仏像彫刻師の方が彫られたものかは大体分かるそうです。

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(京都マンガミュージアムの火の鳥も、須藤さんが彫られたものです!)

須藤さんには大変穏やかにお話しいただきましたが、本堂のご本尊を作製されるにあたってのきめ細やかで繊細な作業には、私たちのはかり知れないご苦労がこめられていると気づかされました。



続いては、木彫師(もくちょうし)の中井伸明さんです。
木彫師とは、仏さま以外の彫刻を担当されます。彫刻の前には絵も描かれます。中井さんの彫られる文様は、昔から守り伝えられてきた型を描いているそうですが、依頼主さんにオリジナルの文様を求められているとそのように作られるそうです。

中井 顔

―オリジナルの文様を作る時は、何かを見てインスピレーションが湧くのでしょうか?
また日ごろから感性を磨くために、何か見たり、されたりしていますか?

「熱帯魚が好きなので飼っています。水草やサンゴも好きです。昔の彫刻などを見ていると、深海魚からデザインのモチーフを取られたものがあります。生き物からデフォルメしているんです。先人も、花や動物や昆虫などからデザインを作られているような気がします。」

―この時代の彫刻を見てほしい!というものはありますか?

「江戸末から、明治の彫刻は技術的に凄いです。誰もが見て圧倒的に認められるのはその時代です。しかし同時に大切なのは、私たちの、見る目が変わるということです。若い時何気なく見ていた彫刻を、最近見るとわーっ凄いと思うことがあります。私の見る目が少しは良くなっているのでしょう。私たちがこれからやって行かなければならないことは、それに負けないことをしていかないといけないということです。最後に皆さんに一番に言いたいのは、見る目を養うことが大切ということです。」

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(丁寧に彫られています)

中井さんはご自身の職に対するこだわりについて熱く語って下さり、ひしひしと胸にくるものがありました。


 

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(前列 右:牧野さん)

続いては塗師(ぬし)の牧野俊之さんです。お仕事はその名の通りお仏壇やお仏具に漆(うるし)を塗ることです。

漆は大きく分けて二種類、国産と中国産があり、現在ほとんど中国産だそうですが、値段はとても違うそうです。

漆を塗っていくのには、季節や湿度などが関係してくるのでしょうか?

「簡単に言いますと、洗濯物が今日はよく乾くなという日は漆は乾かないんです。漆は湿度がある時に乾きます。だから梅雨時期は漆が乾きすぎるので逆に塗れないんです。すぐに乾いてしまうので。」

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(漆って不思議ですね!)

また漆は様々な色があります。漆屋さんに塗師が依頼して、朱色、うるみ(べんがらという岩料を混ぜる)など、調合して作ってもらったものを使うのです。

漆は時間が経つとどう変化していくのですか?

「 時間が経つにつれて漆の色はだんだん変化していきます。まただんだんと岩料の色が出てより明るくなってくるというか、岩料の色が透けてきます。」

つきつめれば、1秒たりとも同じ色はないのです。「諸行無常」という仏教に説かれる理を感じさせられました。

牧野 顔

また漆もそうですが、牧野さんいわく、本物の仏具というものは「時代が経って、古くはなるけど、悪くなることはない」とのこと。
それだけの責任を伴う作業をされていることを伺い、私も自然と背筋の伸びる思いがしました。

牧野さんは、テレビに出てくる芸人さんのように本当にお話が上手くてオーラがあり、その魅力に引き込まれました。


清水 顔
前半最後は清水ひろみさんです。清水さんは箔押師で、仏像や仏具に金箔を押していかれます。
金箔は木材でも、金属にでもその上に押せるそうです。

金箔には「断ち切り」と「縁つき」と大きく分けて二種類あるそうです。前者は金箔を重ねて一気に正方形に切り、後者は一枚一枚丁寧に切っていくもので大変高価になるとのこと。

浄土真宗は金仏壇で特に金とはかかわりが深いですが、金の良
さはどういう点がありますか?

「金色というのは、私たちの普段の中にはないです。一般家庭には溶け込みません。ですから、インパクト与えたいところ、特別なところに金箔を押します。それで非日常をあらわすのです」

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(清水さんが金箔を押された空殿)

確かに金色のお仏壇そのものが家の中心で、阿弥陀様がいらっしゃる特別な空間だったのですね。
そしていつの時代も変わらない光、輝きが金色で表してあり、どんな時も私たちを支え続けてくれているのだと味わいました。

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変わったものに金を押した経験はありますか?
「部屋全体です。金箔の部屋に入ることができますよ。」

東京の箔座というお店では、金箔の茶室に実際に入ることができるようです。豊臣秀吉の気分が味わえるかもしれません!!

以前清水さんが師匠の下にいらっしゃった時は、金箔が飛ばないように、夏の暑い時期もクーラーも扇風機も使わずに汗が流れる中で作業されていたようです。
今は工夫があるのでしょう。クーラーつけておられるようです(笑)

清水さんには後半の参加者全員によるワークショップ「箔押し体験」でもう一度ご登場いただきます!
しかしこの時点では、箔押しの大変さを後に思い知ることになろうとは、誰も思っていませんでした...。

 

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後編に続きます)

 

親鸞聖人の法然聖人との出会いに思いをよせて

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備後教堂を会場に仏教教養講座を開講しました。
この度の教養講座は、〝御絵伝の解説〟ということで、大阪より若林眞人先生と宮部誓雅先生にお越しいただきました。

※御絵伝とは親鸞聖人の御生涯を絵で表した掛け軸のことです。

「若林先生のご法話に宮部先生のプロジェクターを使ったご絵伝解説楽しみだなぁ♪」0189

讃仏偈のお勤めで始まりました。

法然聖人と親鸞聖人はどんな出会いだったのだろうと想像しながらの開会式です。


 

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第一部は宮部先生のご絵伝解説です。
普段は小さくて見えないような細かい所も、スクリーンに拡大して色鮮やかに映され、くっきりはっきり見えます。
そして驚くことになんと、動く!!まるでアニメーションのような技術で、ご絵伝で表されている情景が私の目の前でより身近に感じられます。人物の解説や、情景のこまやかな説明に、初めて聞かせていただくお話しが盛りだくさんです。

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このように、右の下から上へ見ていきます。浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の御一生ですから上から下へ見下ろすのではなく、見上げていく(仰ぎ見る)という意味も込められているそうです。

その後、40分ほどのお時間で解説をしていただきましたが、この映像資料を作るのに数年がかりという大変な労力をかけておられるようです。
さらに仲間と研鑚しながら少しずつ改良を加えられて、より分かりやすく伝えられるように日々進化しているというのですから、その完成度の高さにも納得です。
これは四幅まで詳しく聞きたい!!という思いが自然とこみ上げてきます。


第二部は若林先生のご法話です。親鸞聖人のひ孫に当たられる本願寺第3代宗主覚如様がご制作なされた御絵伝は、親鸞聖人の御生涯を通して阿弥陀様のお救いを告げられいくもの、と聞かせていただきました。

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慈鎮和尚のもとで得度をされ、弟子になられたのは対比の構造を作られたのではないかという事でした。慈鎮和尚は比叡山でも天台座主のお方です。当時の比叡山仏教界のトップであります。その天台座主慈鎮和尚の教えを投げ捨てて、法然聖人の弟子となられたというドラマチックな対比になっている訳です。
その場面、親鸞聖人が初めて法然聖人の元を訪れられた時の情景を、まるでそこで見てきたことを再現しておられるのではないかというような、臨場感溢れる表現に、会場が惹きこまれていきます。

※慈鎮和尚(じちんかしょう)・・・慈円とも呼ばれ、天台座主職につくこと4回に及ぶ。親鸞聖人のご生涯を詞書にした『御伝鈔』によれば親鸞聖人得度の師とされる。

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迫力のある話術で、思いもよらなかった初めて触れるお話しに皆さん興味深々です。


 

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最後に会場からの質問にもはっきりと、そして優しく答えていただきました。

遠近各地より御参りくださった皆さま、本当にありがとうございました。
来年も仏教教養講座、開講予定です!お待ちしております。

 

ホームページトップ画面変更しました。

備龍会結成40周年を記念して作られた中啓(僧侶が用いる儀式用具)のデザイン画をホームページトップ画面に設定しました。

作画担当:豊田真里沙(とよだまりさ)さん

略歴
1985年 福岡県北九州市生まれ。
大阪芸術大学芸術学部 情報デザイン学科卒業。
京都造形芸術大学大学院 修士課程 修了。

【WORK】
2010年NHK連続テレビ小説『てっぱん』笹井拓郎部屋・絵画制作
2012年NHK連続テレビ小説『純と愛』狩野剛/絵画指導担当
【HP】
http://marisatoyoda.com

無題1 ≪ 定型紙(A4) ≫

作品名 :春音(はるね)
説明文 :お寺の中では 朝夕と鐘の音が響き お香の香りが漂い お経の音や人々の集う声がきこえます。喜びも悲しみもありのままをうけとめてくださる場所。そんな中の一日。春の音を感じていただけたらと思い製作しました。