7月に入った日の夕方でした。梅雨空の中、いよいよ猛暑が始まるとの情報を県内のプール開きを伝えるニュースで聞きながら、被災地で過ごされる方々のことをふと思い返していました。
その思いに至ったのは4月の地震で大きな被害を受けた熊本を訪れた経験からでした。この暑さの中をどのように過ごされているだろうか… 復興は進んでいるのだろうか… わずかな滞在ではありましたが、被災地「熊本」で見て聞いて感じたことを記させていただきたいと思います。
震災から2カ月近くが過ぎた6月6日に熊本へ向かい、備龍会として2泊3日のボランティア活動をさせていただきました。会員個々においては震災間もない時期に現地に向かった者もいましたが、本震後に途切れることなく続く余震の終息がみえない中、会として被災地に向かう判断がつかず、徐々に震災を伝えるニュースも少なくなった5月下旬に「まだ現地でお手伝い出来る事が何かあるのでは。」と被災地入りを計画したことでした。
現地に向かい最初に見た震災の痕跡は、車窓から見える家々の屋根の上に掛けられたブルーシート。様々な被災地で目にした風景に、現地に足を踏み入れる緊張感を持ちました。
先ず訪ねたのは今回の活動先をご紹介くださった本願寺熊本別院でした。会として募った義捐金をお渡しし、別院のご輪番から被災地の現況を聞かせていただきました。余震の影響で私たちの思っている以上に復興は進んでいないこと、また深刻な被災は局地的であることを知りました。
(熊本別院でご輪番から被災地の現況を説明いただきました。)
※輪番・・・別院を統括する役職。その役職者。
翌日、ボランティア活動をさせていただいたのは南阿蘇村の浄林寺さまでした。南阿蘇村はこの度の地震で大きな被害を受けた地域の一つで、15名の方が亡くなられ1名の方は未だに行方不明です。現地までの道中では大規模な地滑りや地割れが散見され、道路は各所で分断され通行止めとなっており、到着に相当の時間を要しました。
浄林寺さまでの作業は集められた瓦礫の撤去でした。殆どが剥がれ落ちた瓦で、瓦礫の量はトラック5杯分にも及びました。しかし備龍会会員10名の他にも別院からの呼びかけで集まられた方々が10名ほどおられ、作業は昼食を挟んで3時間あまりで終了。このような状況下では、人の力、特にたくさんの人が同じ思いを持って動く事が本当に大きな力になると感じました。
この日の作業を手伝いに来られた方の中に自宅が全壊された方がおられ、話を伺うと自宅での作業は一先ず終わったので手伝いに来られたとのこと。自らが被災したことで被災された方の大変さが分かるから助けになりたかったとお話しくださいました。
(大量の瓦礫も徐々に撤去され、きれいになりました。)
(昼食は各自で用意して行きましたが、浄林寺さまのご厚意でおにぎりや団子汁などをご馳走になりました。大変美味しくいただきました。)
作業が終わると、浄林寺ご住職のご厚意により南阿蘇村の被災箇所を案内していただきました。ご住職は自身も被災者でありながら消防団員として被災地で活動しておられ、その体験を踏まえて震災直後の状況をお話しくださいました。倒壊した建築物、大規模な地滑りの痕、崩落した阿蘇大橋、案内していただいた各所で突然に起こる自然災害の恐ろしさとその現象に対する人間の無力さを痛感しました。
(大規模な地滑りの痕)
(同じ南阿蘇の正教寺さま。山門と鐘楼は完全に倒壊しており、本堂にも大きな被害を受けておられました。)
(地震の揺れにより倒壊した家屋)
(崩落した駐車場の路面とガードレール。阿蘇大橋や東海大学阿蘇キャンパス近辺には深刻な被害が出ておりました。)
最終日は、益城町と熊本市内の寺院を訪ね、備後教区少年連盟が取り組んでいる「おさがり袋」をお供えさせていただきました。この取り組みは、お菓子を詰めた袋をお寺のご本尊(阿弥陀さま)にお供えし、その後、お参りに来られている方々におさがりとしてお配りする活動です。袋にはご法話を記し、仏さまにお供えしたお菓子をいただきながら教えにも出遇っていただくことを目的にしています。今回は、この取り組みが余震の続く被災地で不安の中を過ごされる子供さん方の1回の笑顔に変わればという願いを込めて行いました。お寺を回ると皆さん被災の中を一歩一歩前進しようという思いを持っておられました。当初は大きなショックを受けられ、その落胆は相当なものだったであろうと想像します。しかし、そのことを感じさせない朗らかな笑顔や言葉で接してくださいました。
(おさがり袋。中にはお菓子が詰まってます。)
(おさがり袋をお供えさせていただいた熊本市の浄福寺さま。前震で傾いた本堂は本震で全壊しており、本震前に本堂から運び出されたご本尊や仏具は難を逃れられたとのこと。)
今回の熊本来訪で一番強く感じたことは、復興は未だ途上であり、私たちに出来る支援はまだたくさんにあるということです。新聞やテレビなどのマスメディアやSNSで情報を収集する方法は数多ありますが、現地でしか知りえない感じられない情報もありました。
被災地の方々がそれぞれに復興に向いて動き出されるには、その思いを支える力が必要です。それが支援可能な状況にある私たちの役割でもあると思いますし、そのためには被災地を忘れないことや、被災された方々が被災の中で我々同様の日々を生き抜いておられるという現実に思いを寄せることが重要であると気づかせていただきました。
熊本地震から早3ヶ月が過ぎようとしていますが、今でも被災地では様々な苦難の中、復興に向けて1日1日を過ごしておられる方々がいらっしゃいます。その復興の一助となれますよう、これからも会としてどのような支援が出来るかを考え、実行し続けていきたいと感じる貴重な3日間でした。