脳のクセがすごい!

最近、脳科学者である池谷裕二氏の著作『自分では気づかない、ココロの盲点【完全版】~本当の自分を知る練習問題80』を読みました。

私と同郷(岡山県井原市芳井町)のお笑いコンビ千鳥のノブのツッコミに「クセがすごい!」というのがありますが、この本は私たちが知らず知らずのうちに持っている脳のクセを、クイズ形式で解説したものです。この脳のクセは「認知バイアス」と呼ばれ、無意識のうちに勘違いや、判断ミスを引き起こします。その本には私たちが日ごろ気づかない80もの脳のクセが紹介されていました。

私が特にこのクセすごいな、深いなと思ったのは、こういう問題でした。


ネズミを飼育する時に通常は餌を皿に入れ好きな時に食べられる状態にしています。

しかし、レバーを押すと餌が出てくる仕掛けに変えても、ネズミはすぐに学習して上手にレバーを押して、餌を食べるようになるそうです。

そこで、一つは皿に入った餌、もう一つはレバーを押して出る餌、どちらも同じ餌で用意します。さて、どちらの餌を選ぶネズミが多いでしょうか?

①    皿に入った餌

②    レバーを押して出る餌


(娘に実験の図を描いてもらいました)


 

私は当然①かと思っていましたが、なんと答えは②「レバーを押して出る餌」だったのです。

不思議なことに、皿から餌を自由に食べられるにも関わらず、わざわざレバーを押すのです。

しかもこれは、ネズミだけではないのです。イヌ・サル・トリ・サカナに至るまで動物界にほぼ共通して見られる現象らしいです。なんと人間もだそうです。同様の実験を、就学前の幼児に対して行うとほぼ100%の確率でレバーを押し、大学生でも5割は押すというのです!目の前にあるにも関わらず!

これは何を意味しているのかというと、この結果は「労働の価値」に結びつくというのです。つまり、苦労せずに得られる皿の餌よりも、労働をして得る餌のほうが価値が高いということをあらわすのです。

始めから得られた贅沢三昧、ゆうゆう自適な生活より、コツコツと地道に働いて得ていく小さな幸せの積み重ねこそ、充実した幸せと感じるといえるのでしょう。

確かに、単純にお金が降ってきて大金持ちになって働かずにすむ幸せを私たちは望みがちですが、本当はそれはなかなか納得いかないのかもしれません。むしろ、そこに「今まで頑張ってきた行いの結果だ」とか、「日ごろの心根が良かったからな」など、後付けででも、それが獲られた原因を自分の中に作り出して、自分で納得していくのが私たちの有様なのかもしれません。

「働かざる者食うべからず」という諺がありますが、これは人間を含めた動物自体が、本来その脳に備えた根深い悩のクセだったようです。

これはネズミをばかにすることはできませんね。私もそうです。ご褒美という成果を求めること自体に幸せを感じていて、日々「努力をすれば、手に入る」と期待せずにはおられないところがあるのでしょう。

逆に「ネズミの目の前にある皿に入った餌」のように、今現在自分にすでに届けられてあるもの、向けられているもの、与えられているものに目がいきにくいということもあるのかもしれません。

あなたはどんな脳のクセを持っていますか?皆さん、自分が行動していると思っていたら、実は脳のクセが私をそうさせているのかもしれませんよ。

仏さまのお話を聞くということは、本当の自分に出会うこと、と聞かせていただいたことがあります。備龍会では「やさしく学ぶ浄土真宗」という仏教入門講座を開いています。

自分では知ることができない自分のまことの姿を、脳のクセも含め私の丸ごとを見通された仏さまのお心に聞いていくことが大切なのです。皆さんもご一緒に聞いていきませんか?


(おまけ)
なんと餌の実験で、これまで調べられた中で唯一、皿の餌をそのまま食べた動物がいるそうです。
それは飼いネコだそうです!

飼いネコのみ、徹底的な現実主義なのか、レバー押しに精を出すことはありません。

ただひたすらに餌を食す。格好良いような。単に食いしんぼうなのでは。それはそれで問題のような…。

筆者 佐藤 知水