旧府中市内のお寺の報恩講では、江戸時代から福山近隣に伝わる郷土料理「うずみ」が精進料理で振舞われているという情報を得て、府中市の中心地にある明浄寺様をお訪ねすることにしました。
※レポートが遅くなってしまいましたが、実際にお伺いしたのは12月です。
府中駅前の道をまっすぐ行くと、突き当たりにあるのが明浄寺様で、備龍会の16代目の会長がご住職をされているお寺です。
※「報恩講」は浄土真宗の宗祖親鸞聖人の90年のご生涯にわたるご苦労をしのび、ご遺徳を讃え、ご恩報謝する大切な法要です。
途中とても素敵な建物があったので立ち寄ってみました。
「恋しき」というチャーミングな名前の建物で、明治5年に創業した料亭旅館を再利用したお食事処とのことです。
府中市はかつて「備後国府」が置かれ、備後国の政治、経済、文化の中心であったこともあり、現在でもこういう奥ゆかしい佇まいの建物を見ることができます。
また、府中市には創業100年を超える企業が60社もあるということからも、その歴史の深さを伺えます。
さらに寄り道をする我々は、アイス屋の老舗「東屋」へ向かいました。
こちらでは神戸や大阪で数年前から話題をよんでいる「インコアイス」を食べてみることにしました。
私は「オカメインコ」をチョイスしましたが、他にも、セキセイインコ・コザクラインコ・モモイロインコ・ヨウム・ぶんちょうの全6種類のラインナップがありました。
フタがオカメインコの顔になっていてとっても可愛いです。
商品説明には
「口を開けて寝ていたら、オカメが顔の上を通り抜けて、足が口に入ったような・・・風味」
恐る恐る食べてみます。
中には「ひまわりの種」が入っていて、インコっぽい風味を確かに感じますが、味はかなり美味しい!!
横で自称インコ好きの先輩が「セキセイインコアイス」をニヤニヤして食べているのを「気持ち悪いなぁ」と横目で見ながら美味しくいただきました。
その後も、実際には寄り道をくり返し府中を満喫した我々でしたが、本来の目的から反れすぎるのでここでは泣く泣く割愛し、お寺へ向かうことにします。
さて、取材陣の府中のイメージといえば、「府中家具」「府中味噌」「府中焼き(お好み焼き)」と大きくこの3つなのですが、明浄寺様のすぐ横には、「浅野味噌」というお味噌屋さん、そしてお寺の左右に「さち」と「古川」というお好み焼き屋(どちらも府中では予約必須の人気店)があるという「これぞ府中!!」という立地条件(残念ながら近所に家具屋はないようですが・・・)。
お土産に浅野味噌で「乾燥みそ(フリーズドライ)」と「府中味噌ラーメン」を買ってみたのですが、これが絶品です。府中に行かれた際にはお土産におススメです。
また本題から反れてしまいましたが、ようやく明浄寺様に到着し、まずは本堂にお参りさせていただきました。
綺麗にお荘厳されたお内陣もさることながら、驚かされるのはご本尊の大きさです。
浄土真宗でこれだけ大きなご本尊は珍しいのではないかと思いますが、約160cmあるらしいです。
美しく彩られたお供物は、ご住職様を中心に型を取るところから手作りというのですから驚きです。
さて、いよいよ本題である「うずみ」についてお伺いをしていきました。
うずみというのは、江戸時代の倹約政治により、贅沢品とされた具材をご飯で隠して食べたのが始まりと言われる料理です。しかし、いつしか贅沢を隠す必要がなくなったからなのか、一般的には作られることがなくなった料理らしいです。
最近でこそ、「B級グルメ」というご当地の郷土料理を競う催しが注目されるようになり、名前を聞くようにもなりましたが、長い間、その存在は隠れていました。
明浄寺様の「精進うずみ」の作り方に明確なレシピというものは存在せず、作り手からまた新しい作り手へと伝授されてきました。
材料には、ごぼう、しいたけ、人参、里芋、銀杏、豆腐、ユリ根、しめじを使います。
左のお皿は完成したあとに添える薬味で、ゆずの皮、せり、ふきのとう、しょうが、ねぎです。
しいたけ・昆布でだしを取り、味付けをした汁で、ごぼう、人参、しいたけを煮ていきます。
続いて、里芋、銀杏を投入!
最後に豆腐、しめじ、ユリ根をいれます。
ずいぶんと大雑把な解説になりましたが、最後にご飯をのせて、具材を隠して完成!!
先に汁を注いでから後でご飯をよそうのが特徴的です。
写真では具材を多めに入れていますが、本来は具材が見えないようにご飯をよそっただけにみせて贅沢しているのを隠して食べる料理だそうです。
味については、美味しいことはもちろんのことですが、この美味しさを文章で伝えることは非常に難しいです。ただ、流行もあり、某所で最近になって急に見かけるようになった「うずみ」とは全く異なる美味しさであるということだけは伝えておきたいです。
それは、まず精進料理ということがあります。そして長く途絶えることなく、この料理を伝え、何十年、何百年と変わることなく、作り守り続けられてきた伝統の味。日ごろは贅沢はできなくても、報恩講のときには、聖人様のご苦労に感謝し、少しでも華やかに厳修したいという先人の願いと、それを受けて今作られている方の思いが詰まった、深い深い味ということです。
深くご恩を喜びながら、有り難くいただきました。
帰るころにはすっかりと日が暮れて、境内では竹で作られた灯篭が夜のお座を華やかに引き立てていました。
お寺はその時代に合わせた取り組みや動きをしなければならないということがあります。しかし、一方で先人たちが守ってきてくださった歴史の重さ、われわれの前に高く法灯をかかげて歩みをすすめてくださった先輩方の思いに心を寄せて、伝統的な部分、守られてきたものをこれからもしっかり伝えていくということも、改めて大切にしていきたいと実感としてかみ締めさせていただきました。