ニッチなチャリティーイベント「GDQ」

今回はニッチなチャリティーイベント、GDQ(Games Done Quick)のご紹介。

2010年から毎年アメリカで夏と冬に開催されており、ビデオゲームのRTA(リアルタイムアタック、最速クリアタイムを目指すプレイ)を動画配信サイトtwitchで生配信して寄付を募るという一風変わったイベントだ。
各シーズンの期間中は走者と呼ばれる凄腕プレイヤーが次々と登場し、レースゲームからアクションゲーム、はてはロールプレイングゲームまでのプレイを様々なパフォーマンスとともに披露し、会場と配信サイトのコメント欄を大いに盛り上げてくれる。もちろん日本人走者もいるので若干の親近感は得られるかもしれない。
何度かリアルタイムで視聴した経験から言える事は、ゲームに疎くてもエンターテイメントとして楽しく見る事のできるイベントという事だ。ただこのイベントは英語進行がメインであり、骨の髄までどっぷりと内容を知りたい場合は、有志による日本語進行、日本語解説のミラー配信を視聴しよう。

では、当イベントの興味深い場面をいくつか紹介しておこう。

任天堂のファミリーコンピュータ用ソフト、スーパーマリオブラザーズでは、二人の走者によるレース形式でのプレイ中、片方の走者がバグ(機器トラブル)ってしまい、泣く泣く最初からやり直しになってしまったところ、もう一人の走者がプレイをやめてその場で待つ、というプレイがあった、この際の会場とコメントは走者の紳士っぷりに大いに盛り上がりを見せた。余談ではあるがスーパーマリオブラザーズの世界最速クリアタイムは4分55秒646である。
その他にも、片麻痺の障がいを持つ走者が登場、左手だけでのゲームの最速クリアを披露。ただただ圧巻の内容に多くの人々、中でも同じ境遇をもつ人には衝撃と感動、そして勇気をもたらしたに違いない。その他にも、目隠しでのゲームプレイや1人で2つのコントローラーを持ち2人用ゲームをプレイするなど趣向の凝らされた運営内容だ。

こういったプレイの中、視聴者はいつでも動画配信サイトtwitchを通して寄付をする事が可能で(ほかにもグッズを買うことで寄付になる)、全体の寄付額も随時確認できる。もちろんゲーム、会場の盛り上がりに応じて寄付も多く寄せられ、最終日には「石油王」と揶揄される高額寄付が次々と寄せられる。ここだけでも一見の価値があるほどに盛り上がる。ちなみに去年2019年夏の総寄付額が300万ドル(約3億1800万円)超えと話題になったが、今年2020の夏は総寄付額が310万ドル(約3億4000万円)、去年を超え過去最大となっている。寄付金は慈善団体である「国境なき医師団」や「がん予防財団」に全額寄付されている。
1週間昼夜ぶっ通しで開催される当イベントは、多い時には何十万人という視聴者がおり大いに盛り上がりを見せ、莫大な寄付金とともに華々しくフィナーレを迎えるといった内容だ。

と、ここまでGDQの概要を紹介した上で伝えたい事がある。
ここ最近のゲームを取り巻く環境では、eスポーツ(ゲーム競技)などの話題もあり何かと脚光を浴びる事が多くなったが、「罪」として取りだたされる社会傾向があるように思える。
ゲームには年齢制限システム「CERO」があり、暴力、言語、思想、性、反社会的表現の度合いによって対象年齢が定められており、店頭でゲームを買う際にも、年齢確認や「小さなお子さんには見せないで」などの注意もあるが、ゲームは健康的ではなく、ただの自己満足で生産性もない、それどころか、引きこもりの助長、犯罪の誘発など「罪」そのもののように扱われるケースもある。
ただ一方でゲームの「功」に目を向ければ、このイベントがそうであるように、自らの普段の行いとはかけ離れた、とてつもなく尊い行いがなされているのである。また、最近は思考力や集中力が鍛えられるゲームも数多く存在し、脳が活性化するという面もある。世界的には「eスポーツ」として認められ、世界大会も開催されており、さらにはオリンピック種目に入るかもしれないと注目を集めたりと、従来のイメージとは大きく変わりつつある。

ゲームに疎い人、ゲームが好きな人、反感がある人、寄付に興味がある人、とにかく是非一度GDQに触れてみてほしい。

最後に、素晴らしきニッチなイベントGDQに感謝を込めて一言。

「ゲームが地球を救う!」

執筆者 小林朋行