仏教教養講座「withコロナの仏教談義」

去る3月12日、毎年恒例の備龍会主催『仏教教養講座』を開催しました。この講座は広く多くの方に仏法に触れてもらいたいという願いのもと、年1回開かれている申込み不要・参加費無料の公開講座です。今年は新型コロナウィルスの影響により、先生のご厚意のもとYouTubeを用いた初のオンライン開催となりました。ご講師の龍谷大学教授 玉木興慈先生には、ご自身の研究室からライブ配信をしていただきました。また、教堂には、視聴する端末をお持ちでない方やインターネット環境が整っていな方が聴講できるように、大型のスクリーンを設置し、お参りをいただきました。

YouTube配信係

今回の配信は、Zoomミーティングで中継を結び、その映像をYouTubeで流すという手法をとりました。そのため、そのことに長けている会員が機材を教堂に持ち入り、配信係を担ってくれました。

会長挨拶リハーサルの様子

講座は、まず備龍会会長の挨拶から始まりました。会長は、初のYouTubeということもあり、少し緊張した面持ちで挨拶に臨みました。会長挨拶の後、いよいよご講義がスタート!初の試みであり、ドキドキした思いで始まりました。

本堂の様子

本年は『withコロナの仏教談義 共に生きる~私たちは何と共に生きるのか~』と題して、「共に生きる」ということを浄土真宗の立場からどのように考えていくことができるのかということを中心に、ご講義を賜りました。

そのなかで印象的だったのが、「共に生きる」という言葉は美しいけれども、果たして我々が実践できるのだろうかというご指摘です。
仏教学者の木村清孝氏の「争生」(living in battle) という言葉を紹介され、『共に生きるというのはとても美しい言葉だが、我々は美しい生き方ばかりできない。他者と争いながら生きている。自然を利用し、破壊し、また他の民族や部族と戦争を繰り返している。このような現実にも目を向ける必要がある』とご講義くださいました。

また親鸞聖人の

「小慈小悲もなき身にて
 有情利益はおもふまじ
 如来の願船いまさずは
 苦海をいかでかわたるべき」

というご和讃を通して、私たちは自分本位にしか生きることができず、思い通りに他の人々に寄り添ったり、他者を導くことはできない。それが人間の本性であるとお話しされ、そしてこのコロナ禍によって、その人間の本性が顕わになっているのではないかとご指摘くださいました。

コロナウイルスへの恐怖から、感染者に対する誹謗中傷、マスクをしない人への過剰な批判、自粛に反するような行動に対する常軌を逸した非難や批判、また偏見や差別など、まさに自分本位にしか生きることができない人間の恐ろしい本性が顕わになった姿ではないでしょうか。コロナと同じように恐ろしいものを内に抱えている我が身であり、自己中心的にしか生きていくことができない煩悩具足の私には「共に生きる」という生き方はできないのだという、その悲しい現実をしっかりと自覚することが大切だと思いました。

また「コロナが解決して、もう大丈夫だとなったとしても、必ずいのち終えていかなければならない。コロナが解決しても、解決しない死という問題がある。」とした上で、「私たちはいつ死んでいくかわからない。けれどもその私の死という問題を解決してくださるのが阿弥陀様のご本願である」と力強くお話しくださいました。

『蓮如上人が「朝には紅顔あって夕べには白骨となれる身なり」といわれるように、いつどうなっていくかわからないのが、私の命の姿である。けれどもいつでもどこでも、「あなたを必ず浄土に生まれさせ、仏にする」とはたらいて下さっている阿弥陀様がご一緒である』とお伝えくださいました。そして、浄土真宗で「共生」ということを考えるなら、「私がだれかと共に生きるということでなく、阿弥陀様が私と共に生きてくださっている」と考えることができるとご講義くださいました。

煩悩を抱えた私は、本当の意味で他者との「共生」は難しいのかもしれません。しかし、一人、一人のもとにいつでも、どこでも、共に生きてくださる仏様がいらっしゃる。その仏様のお慈悲をそのまま受け止めさせていただき、お伝えさせていただくことが、肝要であると教わったように思います。

質問タイム

本年は新たな試みとして、ご講義の後に先生と対談させていただく時間を設けました。 対談の時間では、会員からの質問やYouTubeのコメント欄からいただいた一般参加者様からの質問に、ご丁寧にやさしく答えてくださり、 大変有意義な時間になりました。
「コロナ禍の大学の様子はどうですか?」「若い学生の価値観を教えてください!」「先生のご自坊の様子はどうですか?」など、講義の中では聞けなかった質問が飛び交い、終止和やかな雰囲気で進められていきました。また、大学の生徒さんについて、「寺族ではない生徒さんの中に、4年間浄土真宗の授業を聞き続け、卒業の頃には、“浄土真宗っていい教えですね”と言ってくれる生徒さんがいる。人生のなかでつまづいたときに、少しでも思い出してくれたらいい。そんな思いで大学で講義をしています」というお話もしてくださいました。

例年とは異なる形での開催になりましたが、100名を超える程のご参加を賜りました。大きなトラブルもなく無事に終えることができほっとしております。誠にありがとうございました。また玉木興慈先生におかれましては、ご多用のところ大変貴重なご講義をくださり、心より有り難く存じます。備龍会会員一同深く御礼申し上げます。
尚、この度のご講義を、3月31日までの期間限定で、YouTubeにてアーカイブ配信を行っています。当日、参加できなかった方、是非ご視聴ください。
https://www.youtube.com/watch?v=KLhRezktXJs